境界性人格障害の効果のある治療法
今週は境界性人格障害について述べてきました。この障害に陥ると、自分だけでなく周りの人もつらい思いをします。
では、境界性人格障害の治療にはどのようなものがあるでしょうか?
多くの治療法がありますが、体験的に特に効果があった治療法を述べます。
今回は、この話です。
○本記事のテーマ
境界性人格障害の人への治療はどのようなものがあるか?
○今週の流れは以下のとおりです。
①境界性人格障害の原因とチェック表(明日) ②境界性人格障害の人のターゲットとされやすい人(明後日) ③境界性人格障害の人からの巻き込みをブロックする方法(3日後) ④その他:境界性人格障害の人が魅力的と言われるのは何故か?(4日後) ⑤その他:境界性人格障害の治療(本日)
○記事の信頼性
記事を書いている私は、心理学分野で博士号を取得しています。30年以上の悩みの相談を受けていました。
○読者への前置き
とりあえず、今回で、一旦、境界性人格障害の話はおしまいになります。次回からは、自己愛人格障害の話に写っていきます。
境界性人格障害の治療について
境界性人格障害の人は、投影同一視や分裂などの心理的な働き(原始的防衛と呼びます)があるので、その治療は困難を伴います。
ここでは、代表的な治療法を2つ述べたいと思います。私の経験から選びました。
【弁証法的行動療法】
個人的にはこれが効果がある実感があります。現在様々な病院が、この方法で治療を行っています。ネットでご覧ください。「弁証法的行動療法 病院」と検索してください。
ワシントン大学の心理学者である、マーシャル・リネハンという人が開発したもので、治療不可能と言われていた境界性パーソナリティ障害に対して有効な成績を納めました。そこには主に4つのスキルがあります。
・苦痛耐性
「自分は危機を乗り切るために、どうすればよいのか」という対処方法を身に付けます。現在の状況を受け入れ、問題を起こすことなく乗り越える方法の発見します。
・マインドフルネス
現在起こっている思考、感情、身体の感覚、行動、出来事などに集中力を使い注意をむけます。気分的な行動を抑える働きをします。
・感情調整
感情がどうして反応したのかを知り、問題解決のための肯定的な感情を増大させ、感情を変化させることを学びます。思考・感情・行動をコントロールする能力の向上を目指します。
・対人関係
必要な時に必要なことを言う能力を向上させるスキルである。自尊心、対人関係を保ちながら、人生で必要なものを手に入れることを学びます。人間関係を破壊することを防ぐスキルであります。
【スキーマ療法とは?】
ジェフリー・ヤングによって開発された。焦点を認知よりも深い、認知構造(スキーマ)にあてるものです。初期の発達段階で形成され生涯保たれる「早期不適応スキーマ」のパターンを変えていきます。それによって自滅的な感情と認知を変えていきます。
スキーマ療法は認知行動療法を基本に心理療法を統合的に組み合わせたものである。「生きて行くのがつらい」などの苦しみを解消するために開発されました。
そのほかに、様々な方法が開発されています。追って特集を組みたいと思います。今回は私の体験から、治療法を紹介しました。
質問コーナー
Q:境界例と思われる妹がいるのですが、病院に行きたがらないです。どうすれば良いでしょうか?
A:本人が、境界性人格障害を直すとの気持ちが必要になります。治療を受けていても、この気持ちがないと、治療の効果はあまり望めません。
まず、妹さんの苦しさを共感してあげながら、「苦しさを和らげるために、どうしたら良いか」と話し合ってみることです。病院に行って、治療を受けて、「苦しさを軽くしてみよう」と誘うのも良いでしょう?
良い悪いがはっきりと分かれて(スプリティングを起こして)、あなたを「馬鹿」とか「死ね」とか言ってくる可能性がありますが、それでも説得することは大切です。
ただ、自傷他害の心配がある時は、措置入院等の手続きを医師と相談することも視野にいれておく必要があります。