
昨日は「書くこと」が認知症の予防や、進行を遅らせるのに効果的であることをお話ししました。
書くことは、脳全体の機能を使うことになるので、脳を活性化することが可能になります。
特に日記を書くことは、その日のことを想起するので記憶を活用することになります。
また、寝る前に書くことが習慣付けされると、日記を書くことが、交換神経有意の状態から、副交感神経有意の状態にかわるキッカケになります。
つまり、日記をかくことがリラックスする状態を自然とつくりあげます。
また、日記を音読することで、耳からの脳に刺激か行き、より効果をましていきます。
本日は、感情伝染について述べます。
〇本日のテーマ 認知症 感情伝染
〇記事の信頼性
記事を書いている私は、心理学分野で博士号を取得しています。
〇読者への前置き
精神医学と心理学の二方面から人間の様々な心理的な面を述べていきます。
感情伝染
以前、認知症には遺伝や、糖尿病などさまざまな要因があり、その原因を予防することを述べました。遺伝等の考えもあります。
そのような原因のなか、アルツハイマー型認知症の場合、まず、海馬に不都合が起こります。
この海馬の不都合が感情伝染に関わっています。さまざまな認知症の症状がありますが、その中の一つに感情伝染があります。
感情伝染とは?
アルツハイマー型認知症の行動に、「感情伝染」というものがあります。
これは、自分を取り囲む周囲の人の気持ちに過敏になって、認知症の人が、感情を出している周りの人の姿を映し出す鏡のようになることです。
具体的には、家族がイライラしたり、怒りながら接すると、認知症の方がイライラしたり、怒ったりします。また、不安に接すると認知症の方の不安感が強くなります。
これは、アルツハイマー型認知症の方は、他人の負の感情を感じ取りやすいことが原因です。
感情伝染が起こる原因
以前記憶についての解説をしました。記憶は海馬、感情は扁桃体と言われています。
感情伝染は、脳の仕組みと深く関係していて、脳内にある記憶を司る(つかさどる)この「海馬(かいば)」と感情を司る「扁桃体(へんとうたい)」の影響によります。

この海馬と扁桃体は、位置的に隣にあり、互いに刺激をしたり、受けたりして活動をしています。
扁桃体から海馬へ刺激

例えば、怒りや、大笑いなどの強い感情の体験をすると扁桃体から海馬に信号が送信され、その出来事は記憶されやすいものになります。
この仕組みは認知症でも同じと言われています。
つまり、海馬の萎縮により、記憶力の低下を招いても強い感情を持つと、上記したように、扁桃体から、海馬に刺激が送られ、記憶に残りやすいことがあります。
扁桃体から海馬、その後、海馬から扁桃体へ
次に扁桃体から、刺激を受け取った海馬は、どのように働きをするでしょうか?
海馬は自分の中にある記憶を想起し(思い出し)、記憶にあるデータを調べ、データに基づいた信号を、今度は海馬から扁桃体に信号を送ります。
例えば、ある危険な事態に遭遇した場合、次のことが起こります。
まず、扁桃体が恐怖を感じます。次に危険であるとの信号を海馬に送ります。
信号を受けた海馬は過去の記憶を調べ、目の前にある危険の危険度を調査します。
その結果、危険度が高ければ、危険をますます感じるように扁桃体に信号を送ったり、危険回避の行動をとるような信号を脳の各部に送ります。
逆に、危険がなければ、扁桃体にこれ以上、危険に反応しないように信号をおくります。
しかし、認知症などで、海馬の萎縮を招くと扁桃体から危険信号がきても、反応しにくくなり、海馬が過去の記憶を調べにくくなります。
それにより、海馬から、危険に反応しないようにとの信号が送られないことになります。
危険を感ずるのを止める信号がこないので、扁桃体がドンドン危険を感じます。
感情的な高まりや、他人の感情に敏感になり、感情伝染も起こりやすい状態になります。
感情伝染 対策
海馬の働きの弱まりとともに、扁桃体の働きが高まり、周りの人の感情に敏感に反応するのが、感情伝染でした。
ならば、周囲の人が明るい感情や、楽しい感情を持って、接することが良いでしよう。
イライラや怒りなどをもつと、その感情伝染が、おこるので、そのような悪感情を持ないことが肝要になります。
悪感情を持たなくても、悪感情をわざわざ見つけて感情伝染を起こすこともありますが、できるだけ、感情伝染を防ぐ選択を取るように心がけます。
まず、認知症に陥った人の環境を整えることが大切です。
認知症の方、その周りの方が、ゆったりとした時間のなか、穏やかな気持ちで生きていくことが大切になります。