人間関係の心理学NO.16 唇による心の傷6

相手を「良い悪いと区別」して、「親と自分が同じ」が終わる時

前回は、生まれたての赤ちゃんはまだ、母親と自分の区別がつかない状態ということを説明しました。

「自分が怒っている時は母親も怒っている」など、感情などが母親と同じと思う傾向にあることも述べました

また、全体を一つのものと捉えられず、同じ母親なのに、「良い母親」と「悪い母親」と分裂して捉えてしまう傾向にあることも述べました。

この区別がないのを「投影同一視」、分裂して捉えるのを「分裂」と専門用語で呼びますが、ここでは簡単に「区別なし」と「分裂」とします。

赤ちゃんに「お母さんに申し訳ない」との気持ちが生まれる時

赤ちゃんはすくすくと順調に育つと、やがて、「良い母親」と「悪い母親」と分裂していたのが、「実は同じ母親」であることに気が付きます。

その時、赤ちゃんの心をよぎるのは、「『悪い母親』と思っていたのが、実は『良い母親』であった。

悪い感情をお母さんに向けてごめんなさい」という「申し訳ない」気持ち(罪悪感)とされます。

むろん、赤ちゃんは言葉がしゃべれませんから、その罪悪感は感覚的なものです。

人はこの「罪悪感」を抱くときに、「分裂」や「区別なし」の世界から徐々に脱して、後期唇期(抑うつポジション)に入ってきます

大人になっても、良い悪いの「分裂」で人を捉えたり、相手を自分の手足の様に「区別なし」に使って相手を支配したりする人がいます。

「お前は『悪い奴』オレは『良い奴』だね」という分裂。「お前は何でオレの気持ちがわからないのだ」という「区別なし」でしたね。

このようになるのは、「罪悪感」を抱かずに大人になった可能性があります。そのために「分裂」と「区別なし」が残って固着しているのです。

米国のオットー・カンバーグという著名な精神科医は、「罪悪感」を心に湧き起こすことを目指(その他の方法も行いますが)して、人間関係につまづいている人を治療をしています。

 質問コーナー

Q:小学校の教員です。私の友達なのですが、私の気の進まないことをやらせようとします。

例えば、「〇〇が欲しいの! セブンイレブンに行ってきて!」と頼んできます。その頼み方が、「早くしなさいよ。あんた教師でしょう? 教師は人のために働くものでしょう? 早く! 早く!」

と言った感じで、まるでその友人にコントロールされている感覚になります。どうしたら良いでしょうか? 私の心に中に妙な怒りが湧きます。

A:友人は自分と他人が区別がつかなく、他人をまるで自分の手足の様に使っています。このような人は、持つべき罪悪感がないことがあります。

また、教員の人のほうに怒りが湧き起こるようなので、友人と同じ怒りが教員の心に湧き起こるように仕向けています。

「私(友人)と同じ怒りを、あなた(教員)が持たなければならない」という「区別なし」(投影同一視)の働きですね。

この「区別なし」を向けてくる場合、友人は罪悪感がないので、巻き込まれるような困難をあなた(教員)は感じると思います。

この場合も、言葉で説得してもなかなか改善しないので、その人を遠ざけるのが良いと思います。また、どうしても関わらなければならないとき「これ以上は、できない」とはっきりとした制限を設ける必要があります。後ほどどこかで、制限の仕方を解説します。

次回に続きます。

       

ターボん について

博士(心理学)、公認心理士、臨床心理士 カウンセリングを通して、さまざまな人の悩みの解決にかかわってきました。ブログを通して、様々な心理学の事象に答えていければと思っています。 申し訳ございませんが、時間の関係上、多数の人からのコメントに返答できないので、コメントができないようになっています。よろしくお願いします。
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