
認知症に陥るととてもつらいものがあります。
その時は、周りの人がサポートをしていく必要があります。
周りの人もやがては自分も通る道ということをよく認識すると、お年寄りの方への対応も違ってくると思います。
認知症に陥った人の症状としては、「物忘れ」などいろいろなものがあります。
その時の心の状態はどの様なものでしょうか?
それを知ることで、認知症のサポートに役に立つと思います。
本日は認知症に陥った人の心の理解です。
また、先に老化防止の記事も書いておきます。
〇本日のテーマ 認知症 心の理解1/老化防止
〇記事の信頼性
記事を書いている私は、心理学分野で博士号を取得しています。
〇読者への前置き
・精神医学と心理学の二方面から人間関係を困難にする状況をゆっくり解説します。
・青い文字は、過去の記事へリンクしています。
認知症 老年期うつ病
認知症の症状によって、認知症に陥った人の様々な心の状態が考えられます。その時の心の状況を理解すると、より効果的なサポートができます。
【「物盗られ妄想」の時の気持ち】
1.どのような行動か?
「物盗られ妄想」とは、財布や現金、銀行通帳、貴金属など「財産にかかわるもの」が盗まれたと思い、周りの人に「盗んだだろう」と疑いをかけてきます。
起きやすい被害妄想で、体が動く初期に見られることが多いです。
また、身近な人がターゲットにされやすく、特に介護をしている人(嫁や娘)、ヘルパー、施設などの職員が対象となりやすいです。
2.原因はなにか?
原因は、記憶の力が失われたことによって、自分でしまったり、置いた場所を忘れたりすることが多いです。
さらに、本人の性格も要因の一つも言われています。
アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症の場合は、場合によって半数以上の人に見られることもあります。
3.その時の心は、どのような状態
認知症に陥っている方の心の中は、「自分の認知症で家族や他人に迷惑を懸けたくない」「自分は大丈夫」という思いがあります。
その思いもと、「しっかりとしまっておく」という行動に出て、物がなくなると、「誰かが盗んだ」という連想につながっていきます。
また、親しい友人がなくなったり、体調を崩したりしていると、不安や怒りが心に在ったりします。その不安や怒りを誰かのせいにして自分の心を守ることが考えられます。
なので、「物盗られ妄想」の行動の背後には、喪失感からの不安や怒り、さらに、「周りに迷惑を懸けたくない」という思いがあります。
その心を理解する必要があります。
4.対応はどの様にするか
周りの人が「盗んでいない」と強く強調しても、認知症に陥っている人からすると、「もっと疑わしい」という結果になります。
諍い(いさかい)やケンカになりやすいので、注意をしましょう。
諍いやケンカになった場合は、認知症に陥っている人は、強い不信感と不快感を持つようになります。
そのために次のことが大切です。
●話を聞く
泥棒扱いにされて、とっても腹が立ちますが、上に書いたように、言い争いは「不信感」を招き、その後の人間関係が悪化することになるので、まず、優しく話を聞くことです。
その上で、「一緒に探してみよう」と声を懸けて、一緒に探すことが大切です。見つかっても、認知症に陥っている人を責めずに、「よかっかですね」とプラスの言葉を懸けましょう。
見つかったら一緒に喜ぶことも大切です。
物は「安心できる場所」にしまわれていることが多いです。
例えば、タンスの奥、ベッドの隙間等々です。
●話題を変えて、複数で対応する
本人は怒りを覚えて、興奮状態が多いので、「物盗られ妄想」を事前に全員で理解をして、複数で対応しましょう。
また、探している間中、他の話題を話しかけると、気持ちが紛れてくると思います。
5.「物盗られ妄想」を防止(軽減)するために
これは単に「物盗られ妄想」だけに限ったことではないですが、普段から本人が不安に思っていることを聞いて、話をすることが大切です。
「大切な人を亡くした」「子どもと同居を始めた」など、生活の変化や、「〇〇ができなくなった」など、能力の喪失についてのこともいろいろと話を聞きましょう
その場合、「本人が語る」と言うことが大切で、共感を持って、話を聞きましょう。「うん。うん。」「そうなのか」などの頷き(うなずき)も有効です。
また、忙しい時も、「後で聞きに行くからね」と対応をすることが大切です。
6.「被害妄想」で、認知症発見になることも
それまで、認知症と気づかずに、被害妄想が出て来て、ここで認知症の発見に至ることがあります。
ここで発見をすれば早期の発見につながり、進行抑制が図られます。
家族で暮らしている人は、被害妄想がでたことが、むしろ発見のキッカケになったります。
これをきっかけに医師の診断を仰いでください。
また、地域包括支援センターなどの相談機関に相談をするのも良いでしょう。