
認知症の人の症状の一つひとつには意味があり、本人が不安などに駆られながら、環境に適応しようとしている様子が見られます。
その行動の意味するところを理解することにより、認知症者への対応が容易になります。
また、コミュニケーションなどを維持し、認知症者の孤立などを防ぐことにつながります。
認知症から自尊心が傷付くなどとして、他人との会話をしなくなり、孤立を招くと認知症が進行することがあります。注意が必要です。
本日は、言葉が出にくくなる「失語」と、顔の認識(見当識)の困難についてお話します。
〇本日のテーマ 認知症 症状 「言葉が出にくくなる」「顔の認識ができない」
〇記事の信頼性
記事を書いている私は、心理学分野で博士号を取得しています。
〇読者への前置き
・精神医学と心理学の二方面から人間関係を困難にする状況をゆっくり解説します。
・青い文字は、過去の記事へリンクしています。
認知症 症状 「言葉が出にくくなる」「顔の認識ができない」

人や物の名前が分からなくなり、「あれ。あれ・・」となかなか名前が出て来ないことがあります。
これが常時になり、失語と言われる状況になります。また、自分の親なのに、「あなたは誰?」とは、全く見おぼえないように扱われたりします。
【話が理解できない】
1.頭の中から言葉が消えてしまった感覚
脳の言語領域が衰えることから、言葉がなかなか出てこなくなります。
話す速度も落ちてきて、うまく語れなくなります。
ペンの事を「書くもの(やつ)」と言ったり、ノリの事を「はるもの(やつ)」などと言ったりします。「・・もの」「・・やつ」が増えます。
また、言葉が出ずに「あれ」「これ」「それ」と言ったりします。
言い間違えも増えて、「ごはん」を「はんご」とか、「てれび」を「れてび」「でれび」などと言ったりします。
「犬の散歩をさせる」ことを、「散歩、犬をさせる」などと、言葉の規則に従わなくなったりします。
2.認知症者の心
認知症の人は、機能が衰えているだけで、感情は普通に感じています。
言葉が出て来なくて、もどかしいのは、認知症の人が一番感じます。
上の赤字のような態度が現れてきているのは、本人が、言葉を伝えようとして努力をしているのです。
それが、伝わらないとなると、本人は「不安」になり、コミュニケーションがとれないので、「孤独感」を感じます。
また、笑われたり受け入れられないと、プライドが傷付き、「阻害された気持ち」になります。
3.解決方法
解決方法は、まず、相手に疎外感を味わせないことが大切です。
言葉に出さないまでも「大丈夫だよ」とメッセージを笑顔や、うなずきで送りましょう。
その上で、「エンピツ?」「ボールペン」「サインペン?」「マジック?」などと、代わりに言葉を優しく言ってあげましょう。
「あれでは、わからない」と告げる時も、タイミングと言い方で、認知症の方を阻害してしまうメッセージを送ってしまうので注意が必要です。
「なかなか、言葉がでてこないのですね。でも、大丈夫ですよ。〇〇ですかね?」と笑顔で、ゆっくりと共に考える(共感をもつ)姿勢が大切です。
【顔の認識ができない】
これは、本人だけでなく、周りの人も、ショックを受けるものです。自分の親や、パートナーが自分の顔を忘れてしまうなどは、思ってもみないことです。
1.視覚を司(つかさど)る後頭葉の衰え
脳の後ろ側の後頭葉は視覚を司ります。後頭葉が衰えると、誰であるかが資格で捉えるのが難しくなります。
視覚で見分けることが難しいので、声や服装、雰囲気などで、その人を見分けようとします。
周りの人は慌てて、「〇〇だよ」と、認知の間違いを正そうとしたりしますが、それでも分からない場合が多いです。
2.認知症者の人の心
認知症に陥っている人は、自分自身が「現在の自分でない」と思っていることがあります。
若い自分の学生時代、また、結婚した当初、子育ての時代等々の自分になっている可能性があります。その時代の自分になった目から見ると、目の前の人たちは、知らない人に映りますよね。
本人は、そのような心になっているので、目の前にいる人が「妻だよ」「夫だよ」「成長した子供だよ」と言っても、混乱をするだけです。
3.解決方法
周りにいる人も不安を感じますが、訂正をされると、本人もいよいよ不安に感じるものです。
ここで、強い不安を持つようになると、本人は疎外感を味わったりします。
そこで、とりあえずは、認証の人に話を合わせておくのも一つの手です。
安心をさせて、一緒にいるうちに、周りにいる人が誰であるかを思い出すことがあります(ただ、そうならないこともあります)。
ただ、無理に認識を正そうとすることは、認知症者の混乱を招くようなら、やめたほうが良いです。
周りの人は悲しい思いになるでしょうが、認知症者の心を大切にして、接することが大切です。