
昨日は高齢者になると多くなる、せん妄の話をしました。
せん妄は認知症を合併すると起きやすいとされます。
特に、脳や神経の病の既往歴のある高齢者は、風邪、脱水、睡眠不足など通常と違う状況になった場合、突然発作が起こることがあります。
ただ、若年の方でも高熱、腎不全、肺炎などの体の状態の悪化や、手術などの普段と違う状況に置かれると発症をすることがあります。
過度の興奮からの錯乱状態、過活動や活動の低下が見られます。大抵の場合、夕方から夜間に悪化し、昼夜逆転が生じます。
重い場合は、昏睡状態になったり死に至る場合や、点滴の自己抜去などが見られます。治療にあたっては鎮静剤、睡眠のための薬が用いられたりします。
本日は認知症に陥った人の半数以上に起こるシャドーイングについての話です。
〇本日のテーマ 認知症 シャドーイング
〇記事の信頼性
記事を書いている私は、心理学分野で博士号を取得しています。
〇読者への前置き
精神医学と心理学の二方面から人間の様々な心理的な面を述べていきます。
認知症 シャドーイング
以前認知症の症状をいろいろとお話ししました。 (こちらもどうぞ)
これから述べるシャドーイングも認知症の進行とともに現れます。
シャドーイングとは
シャドーイング(まとわりつき)とは,介護者の方(それ以外の人の場合もあります)を極度に追って回る(まとわりつく)ことです。x
徘徊の1つに分類されることもあります。
現われ頻度は、軽度から中等度の認知症に陥った人の7割前後に認められるとの研究報告もあります。
ただ、これはその人が置かれた立場の場合によって、感じられる頻度が違うと感じられると思います。
医療現場では、あまり出現しないが、介護の現場で出現することが多い時もあります。
認知症の男性の患者さんが、奥さんがお見舞いに来て、変える時に「姿が見えなくなる」と、後を追いかけて、毎日「迷子」になってしまうこともあります。
これなどは、シャドーイングの典型的な例です。さらに介護士の行く先々に後追いして現れて、介護士が仕事にならない場合もあります。

暴力を振るう場合もある
シャドーイングについても、一日中付きまといながら、同時に不安から暴力を振るったりすることもあります。
さらに、動きがゆったりの他の利用者を叩いたり、不快感から唾を吐いたり、大声を出すこともあります。
または、ボディタッチを繰り返する場合のあり、一日手を握ったり、手をつないだりすることもあります。そうしながら、もう一方の手で、相手を叩いたりすることも見られます。
一人にされると、不安などから激高することもあります。不安などの気持ちを汲み取ってあげることが大切です。
シャドーイング 看護
認知症の進行により、認知機能が衰えて、感情がコントロールしにくくなります。その結果、不安・焦りなどを感じやすくなります。
まず、まとわりつく行動を受け止めてあげて、高齢者の方が、1人でいられないことを理解してあげることが大切です。
シャドーイングは、感情が不安に支配されてしまう状況なので、主体性を発揮し、自立した生活を送れるようになると、シャドーイングが治まることがあります。
グループホームなどでは能力に応じて、自立した生活を営むことから、シャドーイングからの脱却を目指すことができます(もちろん、上手くいかない時もあります)。
以前もお話ししましたが、くれぐれも自尊心を傷つけることがないように注意が必要です。
以前、カラオケによる認知症の予防を述べましたが、このシャドーイングも歌で回復させた実践例がありました。
シャドーイングをされている方と、介護士が歌の練習をして、何か月か続けて、1人で歌を歌えるようになるにつれて、シャドーイングが徐々になくなったという話をきいたこともあります。
また、レクリエーションや、体操などを楽しむにつれて、シャドーイングがなくなったとの話をきいたことがあります。
不安・焦りを取りのぞいて、主体、自立性を持たせていくことが大切になります。
「シャドーイングをしないように」聞かされて、本人が納得しても、その時は、うんうんと頷くかもしれませんが、あまり効果がない場合が多いです。
気持ちまず、受けて止めて、主体性や自立を目指す生活を目指すのが良いでしょう。