
認知症ケアは、自分が世話をする人の認知症の原因、経過、認知症の方の心の状態を知らなければなりません。
まず、正しい知識を得るようにしましょう。
その上で、認知症の方ができることをしてもらい、先回りをしてやらないことが大切です。
認知症の方とコミュニケーションを良く取り、環境を整えていくことが大切です。
また、介護疲れから、介護をする方が限界を感じたら、積極的に相談できる施設や、周りの人々に相談をすることが大切です。
皆で、協力し合って認知症者の方の見守りをするように図ることが大切です。
本日は、前頭側頭型認知症の症状の中の「ピック病」についてお話します。
〇本日のテーマ 認知症 ピック病
〇記事の信頼性
記事を書いている私は、心理学分野で博士号を取得しています。
〇読者への前置き
精神医学と心理学の二方面から人間の様々な心理的な面を述べていきます。
認知症 ピック病
以前、前頭側頭型認知症の原因の話しをしました。また、その後の経過の話もしました。
ピック病は、前頭側頭型認知症の症状で、前頭側頭型認知症の80%は、ピック病であるとされています。
前頭側頭型認知症は、前頭葉と側頭葉前方に委縮がみられますが、ピック病は、脳の神経細胞に「ピック球」が見られます。
ただ、ピック球を認めたものすべてをピック病とするかは議論があるところです。
なぜなら、ピック球がなくても前頭葉・側頭葉前方に委縮が見られ、現在は「ピック病は前頭側頭型認知症の一つ」と分類されています。

ピック病 症状
ピック病は40歳から60歳にかけて、比較的若い人が発症すると言われています。よく、若年性アルツハイマー病とくらべられたりします。
ピック病にかかった人には「自分がピック病にかかったとの認識」はありません(つまり、病識がない)。
つまり、周りの人が発見をして、対処をしてあげなければなりません。
本人は人格の変化に対する関心もありません。
ピック病の症状としては以下の通りです。
情緒の障害
笑ったかと思うと突然泣いたり、情緒がくるくると巡り、不安定になります。
意味もなく同じ行動や言葉を繰り返したりします。
ピック病 人格変化
性格(人格)が急に変わったりします。この傾向は、アルツハイマー型認知症よりも強いと言われています。
また、対人関係も変わり、悪くなります。他人を無視したり、馬鹿にした態度をとり、また、いじける態度をとったりします。
お医者さんの問診に、いい加減に答えたりします。
自制力低下
話を一方的にしゃべる、短絡行動が増えるなど、行動の自制が利かなくなります。
また、万引きを何度も行う、他者の家に勝手に入るなど、逸脱した行為が目立つようになります。
行動の障害
あることを継続してできなくなったり、行うにしても時間が大変にかかったりします。
また、食べ物の好みが変わり、偏食をするようになったり、味付けの濃いものをこんだりするようになります。
※ 以上のことから、ピック病に陥った方は、施設の入所を断られる場合があります。特に暴力行為が頻発される場合は、施設の能力を超える場合があります。
そのような場合、相談に乗ってもらえ、施設を探してもらえる機関の利用が考えられます。
また、ピック病にかかっていない場合でも、自分の条件に近いところを探すのは大変です。
どうぞ、ご利用ください。念のため、定評のあるところを2つ貼っておきます。
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ピック病の診断
ピック病は前頭葉、側頭葉前方に委縮が見られるため、CTやMRIを撮影し、これらに委縮が認められるかを確認します。
また、SPECT・PETという脳血流やブドウ糖代謝を見る検査で、前頭葉・側頭葉の血流あるいは代謝の低下があることを確認し、ピック病と診断されます。
ピック病の治療
CTや、MRIによる撮影をします。また、PETなどの危機を使って、脳血流、ブドウ糖の代謝を検査して、診断をします。
ピック病に関しては有効な薬がないと言われていて、精神病的な症状に陥るときは、向精神薬を用いることがあります。あまりに酷い場合は、精神病院へ入院をさせます。
ピック病は、アルツハイマーと違い、記憶はそれほどひどく損なわれません。道を覚えているので徘徊をして、迷子になることもありません。
ただ、人格障害や情緒障害が著しいことになるので、そのことを特に心にいれておく必要があります。
ピック病 症状 対応
ピック病の方には「毎日、同様のことを繰り返す(常同行動)と落ち着く」ことがあります。
例えば、毎日同じコースを散歩する。
毎日、同じ時間に食事をして、同じ言葉を掛ける等、同じ行為をするように働きかけると、暴れたり、暴言を言ったりすることは減ってきます。
ピック病の人がアルコールを多く飲酒する場合、アルコール性認知症と大変に似た症状になります。
アルコール性認知症を発症すると、問題行動を頻繁に起こすことがあります。また、脳の萎縮あり、ピック病と類似点が多いのでピック病と間違われることが多々あります。
アルコール性認知症では、記憶が飛んだり、や周りの状況が認知できないことも見られ、ピック病との違いがあります。
このようなことから総合的に判断することが大切です。疑問に思ったら、できるだけ早く、医師の診断を仰ぐのよろしいと考えます。