
遺品もわずかな場合は、残された者が遺品を整理するほうが簡便な時もあります。
ただ、家一軒分、マンションにぎっしりと荷物が詰まっている場合は、親族だけの手で片付けるのは容易ではありません。
そのような場合は遺品を整理する専門の業者を雇うと良いでしょう。また、まだ使える物や高価な物を査定し、買い取ってもらえる業者に頼むと費用も安くなります。
故人の遺品を形見とする場合は、買い取ってもらうことは、なかなかできませんが、そのような思いが薄い遺品などを検討されるのも一つの方法です。
本日が、自分の死後の後片付けについてです。
〇本日のテーマ 死後事務委任契約
〇記事の信頼性
記事を書いている私は、心理学分野で博士号を取得しています。
〇読者への前置き
・精神医学と心理学の二方面から人間関係を困難にする状況をゆっくり解説します。
死後事務委任契約
自分の死後、葬儀、医療費や公共料金の支払いなど様々な手続き「死後の事務」を、本人の代わりに誰かがやらなければなりません。
普通は子供や親類などが行ないますが、本人に子供や身寄りがない時などは、事務をする人がいない状態になります。
遺言やエンディングノートを利用することを考えられます。
ただ、「死後の事務」に関して、遺言やエンディングノートの記載は法律の効力がなく、実施しなくても何も問われることはありません。
そこで、特定の人と「死後の事務」の委任契約を結んでおくと、特定の人は実施しなけれはなりません。
昨今の少子・高齢化社会を迎え、子供がいないまま、配偶者に先立たれたり、一生独身のまま過ごす人が多くなりました。
自分の仕事の後始末をしてくれる人がいない場合、生きているうちに、対処をする必要があります。

死後事務委任契約とは
死後の事務委任契約とは、民法上の委任契約の一種になります。
本人の死亡後に、葬儀の手配など、さまざまな手続きを本人の代わりになって代行することを委任します。
民法の規定では、死亡によって委任契約は終了しますが、特約によって変えられます。
この点については、最高裁判所も判決で認めて、死後の事務委任契約は有効とされています。
また、民法では、委任者は「実現困難または不合理」でない以外は、契約の解除は許さない、としています。
すなわち、委任を受けた者が不満をもっても内容によっては契約の解除をできないとしています。
そのため、死後の事務委任契約書によって明確にしておくことが必要となります。
死後事務委任契約がない場合
死後の事務委任契約がなく、例えば、孤独死などで、本人の遺体が見つかった場合はどうなるでしょうか?
この場合、大体の場合、市町村が遺体を引き取ります。
その上で、火葬、埋葬をします。ただ、火葬して埋葬するだけで、お墓をたてません。まるで無縁仏のように扱われます。
また、遺言状に葬儀を記載しても、執行する者がいない時は、遺言の内容は実現されません。
デジタル遺品
最近、問題となっているのが、デジタルに残された遺品です。
例えば、インターネット銀行にある預金がそのまま埋もれてしまうおそれもあります。
また、本人死亡のまま、アカウントののっとり、さらには、悪質なサイトとして、犯罪のために使用される場合もあります。
相続人がいくても、社会的に害悪となりうる可能性がデジタル遺品にはあります。
死後事務委任契約で可能なこと
死後事務委任契約は、公序良俗に反するなど、法律が禁じる以外のことであれば、大体の内容は自由にきめられます。
たとえば、「亡くなる前の医療や介護の支払い」「葬式や埋葬の手続きや支払い」「墓石を作ること、永代供養費」「死亡届など各種届出」「デジタル遺品の始末」など多岐に渡ります。
こんな人が利用を
死後事務委任契約は本来、親族などの相続人が行なうべき手続きを、相続人に代わって行うことを目的とした契約です。
そのため、相続人のいない人や、たとえいたとしても、それまで付き合いがなく連絡先もわからない、という人は死後事務委任契約を検討するのがよいでしょう。
葬儀の問題もありますし、特にデジタル遺品については、きちんと処理しておかないと、自分ばかりか他人へも迷惑をかける可能性があるからです。
任意後見契約との関係
任意後見契約とは、認知症に陥ったり、死期が迫るなどすると、判断能力が低下するので、任意後見人により本人の財産管理と身上の監護を行います。
認知症になりやすい病気にかかっている場合は、病気が悪化した場合は、認知症も発症しやすいことを考えて置くことも大切でしょう。
しかし、この契約は死後の事務については効力がありません。
そこで、従来の契約に加えて、任意後見契約と一緒に死後の事務委任契約も交わしておくことが大切です。
死後事務委任契約 公正証書
死後事務委任契約は公正証書で作成をします。公正証書は、確かに契約が交わされたことの強い証拠となります。
委任契約は口頭でも成立しますが、契約を結んだあと、トラブルが発生することがあるので、きちんと書面で委任内容を明らかにしておきましょう。
公証人が、契約書面を見て、様々なトラブルを念頭に公正証書を作成するので、一旦作っておくと、その後のもめごとをさけることができます。
支援団体の利用
本来、死後事務委任契約を結ぶのは自分の信頼を置いた人なら誰でも良いのでありますが、「死後の自分のこと」を委託できるまでの人ががいない人もいるでしょう。
そんな場合、最近は死後事務委任契約を結ぶための支援団体があり、あらかじめお金を預けておかなくても良い方式などをとっているところもあります(その場合は、残された財産から支払われることになります)。
また費用の定めはなく、本人と委任者の間で報酬は決めることになります。