
昨日は高齢者のQOL(Quality Of Life)についてお話ししました。
QOL は「生活の質」「人生の質」などと訳されます。
「よりよく生きる(生活する)」「活き活きとした生活を送る」という意味が含まれています。
QOL の上昇には身体の健康・精神の健康(生命の質)、生活の機能(生活の質)、社会性(人生の質)の向上が必要です。
その向上を実現するためには、具体的には、高齢者自身の「生きがい」などを見つけることが大切です。
健康でよく食べて、寝て、気のあった仲間と過ごし、好きなことをしつつ、社会活動も行うなどすると、QOLを高まります。
本日は高齢者の貧困です。
〇本日のテーマ 高齢者 貧困
〇記事の信頼性
記事を書いている私は、心理学分野で博士号を取得しています。
〇読者への前置き
精神医学と心理学の二方面から人間関係を困難にする状況をゆっくり解説します。
高齢者 貧困
厚生労働省によると、単身世帯で所得150万円未満の65歳以上の人は、2012年時点で5%前後ですが、その後、毎年増えています。
また2015年時点で平均所得金額は190万円前後で、公的年金のみの高齢者世帯は半分以上の55%前後です。
65歳以上で、貧困率も増加していることから、現在の年金では不足している事実がわかります。
現在は、単身の高齢者が増加して、別に暮らしている子ども世帯からの援助がない状況です。
2018年の公的年金の受給の平均額は、65歳以上の男性が月額約17万円前後、女性が月額約11万円前後でした。
この金額も年々減少しています。夫婦で年金をもらえれば、とりあえずやっと暮らしていけますが、そうでない単身世帯は、生活が苦しいのが実情です。

高齢者 貧困率
全体の貧困率が上がっていますが、「女性単身高齢者世帯」の貧困率が高くなっています。
年金は一般に「二階建て構造」とされます。
基本的に全員が受け取れる「一階部分」の「基礎年金」と、「二階部分」の「厚生年金や共済年金」からできています。
しかし、年金受給者(特に多くの女性)の中にはこの一階部分の基礎年金しか受給できない方もいます。
基礎年金は月額満額で6万5000円前後で、これでは貧困に陥ります。
現役の時にためた貯蓄を切り崩すしかなく、貯蓄がない人は、いよいよ困窮します。
旦那さんが会社に勤めてなく、自営業、農業、漁業に従事していた場合、旦那さんと死別して、女性が単身になった場合、基礎年金だけの受給となります。
また、結婚をしておらずに非正規雇用の仕事に従事していた場合、基礎年金のみの受給になります。
また、現役の時に、安い給与だったり、厚生年金の支払いをあまりしていなかった場合は厚生年金が低額となります。
特に女性の場合は、安い給与の場合や、期間が短いため、男性よりも低い可能性があります。
高齢者 貧困 対策
では、高齢になった時に貧困にならない方法を防ぐにはどのようにすれば良いでしょうか?
まずお金の入り用をしっかりと把握をしておくことが必要です。
高齢者 お金 計算
総務省統計局によれば、夫婦で老後生活を送るために必要とされる日常生活費は、夫婦で月26万8000円(令和4年)とされています。
生命保険文化センターというところの調査によると、さらに老後にゆとりのある生活を送るためには37万9000円(令和4年)の生活費が必要とされています。
もらえる年金額と比べても、とても足りない状況で、場合によって85歳までに、2300万円から3000万円の赤字が見込まれます。
また、単に生活費の他に、次のような費用も考えられます。これらの金額も頭に入れる必要があります。
入院・手術費用
介護の費用
葬祭の費用・身辺の整理代
旅行・娯楽・趣味
住宅のリフォーム代
高齢者 預貯金管理
従事している仕事により、退職金や年金などの額は変わります。
また、退職金も減額されているため、将来もらえる金額や生活費を計算し把握することが必要です。
さらに、不足分が予想できる時は、現役時代からある程度の貯蓄をしておくことも大切です。その貯金額の管理・把握も必要です。
高齢者 雇用環境
現在、高齢者の貧困に関して国の対策は「退職年齢を引き上げること」「高齢者の再雇用を図ること」などです。
公務員は60歳で定年退職を迎えると、希望者は65歳まで再任用という形で継続して勤務できます。民間も再雇用が広がっています。
さらに、高齢者が仕事探しの方法が多様化しています。
具体的には、ハローワークのシニア向けの求人、さらには、インターネットでの求人サイト等々です。
様々な求人情報を利用し、自分に合った仕事を探し、収入の少なさを補うようにするのも方法です。
公的年金制度は少子高齢化が進むと、給付金額が低下する仕組みになっています。
これにより、高齢者は今後、支給金額が減少することも考えられます。
それぞれが防衛線を貼っておく必要があります。
年金 繰り下げ制度
年金の受け取りを遅らせることで、年金額が増える「繰り下げ制度」があります。
65歳から就労することで、年金を繰り下げて、増額した分を受け取ると、将来年金が減ることにある程度、対応が可能です。
ただ、寿命が短い場合は、もらう分が減ってしまうので、熟慮が必要になってきます。
高齢者 働く意欲
2015年の高齢者世帯の実際の手取りは、平均約240万円前後で、全体の平均430万円前後より半分近くとなっています。
高齢者世帯においては、「公的年金」が総所得の7割近くを占めています。
次いで(雇用者所得、事業所得、農耕、畜産所得などの)「稼働所得」が2割近くです。
さらに、(家賃収入、駐車場収入、株式配当などの財産や資産での利益所得である)「財産所得」が1割り近くとなっています。
ただ、このような実態に関わらず、高齢になっても、働く意欲のある人が多いのが実情です。
以前は定年の年齢も今より早い年齢でしたが、時代が流れるにつれて60歳や70歳はまだまだ働けるほど元気という人が多くなってきています。
健康面からも勤労意欲が強い人が多く、働けるのであれば働きたい、と多くの人が答えています。
だいたいの流れとして、「正社員として60歳定年」「65歳まで嘱託社員・再雇用」「66歳からはアルバイト、非常勤勤務」というパターンがあります。
つまり、60までを正規雇用、60以降を非正規雇用として働くというものです。
実際、非正規職員・従業員の比率の割合をみても、男性の場合、55歳から60歳未満は約90%、64歳までは約77%、70歳までは約53%です。
女性は、55から60未満は約70%、64までは約51%、70までは約33%です。
ただ、どうしても働けない場合は、生活保護という方法もあります。
高齢者 働く理由 厚生労働省
高齢者が働くことは貧困を防ぎます。また、様々な制作物・製品の生産性を落とさないための労働力の確保として、大切なことです。
生産性が落ちると、他の国との競争力も衰えることになります。
こういった事情を踏まえて「厚生労働省の労働政策審議会」が高齢者雇用対策について話し合いが行われました。
そこでは、高齢者に職を提供する地方自治体のハローワークやシルバー人材センターの機能を強化することが話し合われました。
また、長時間勤務への要望から、それまでの「月10日程度または週20時間以下」の労働から「週40時間まで」拡大することを認めるように進められています。
さらに、社会人経験を活かし、「清掃」「駐車場などの管理」「警備員」といった軽作業といった労働から、専門性のある仕事ができるように感がられてきてます。
また同時に企業に対しても再雇用を促進したり、高齢者の雇用を推奨しています。
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、それが2013年4月1日から施行され、定年に達した者の再雇用(継続雇用)のほか、定年の引き上げが図られています。